ピラティススタジオに一歩足を踏み入れると、「ニュートラルにして」「インプリントを意識して」「エロンゲーションを保って」といった、日常では聞き慣れない言葉が飛び交います。
初心者の方にとって、これらの専門用語は「難しそう」と感じる壁になりがちです。しかし、ピラティスの用語は単なる名前ではありません。それは、あなたの身体を理想の状態へ導くための「精密な設計図」です。
本記事では、言葉の意味だけでなく、それを「身体のどこで、どう感じるべきか」という実践的な視点で徹底解説します。このガイドを読み終える頃には、インストラクターの指示がスッと身体に落ち、エクササイズの効果が劇的に変わるのを実感できるはずです。
- 第1章 ピラティス用語を理解する重要性
- 1-1 用語を知らないと起こる「3つのロス」
- 1-2 用語を理解するメリット:身体が変わるスピードが上がる
- 1-3 用語理解の基本スタンス:言葉を「感覚」へ翻訳する
- 1-4 まとめ:言葉はあなたの「最強の補助具」
- 第2章 ピラティスの基本用語と意味
- 2-1 ニュートラル(Neutral)— 身体の「基準点」
- 2-2 インプリント(Imprint)— 安全を守る「保護ポジション」
- 2-3 コア(Core)& センター(Center)— 全ての動きの「発信源」
- 2-4 アライメント(Alignment)— 美しさと機能の「整列」
- 2-5 インナーマッスルとアウターマッスルの使い分け
- 2-6 プレシジョン(Precision)— 「正確さ」という美学
- 2-7 まとめ:用語は「身体との対話」を助けるツール
- 第3章 呼吸・体幹・器具に関する用語
- 3-1 チェストブレス(Chest Breath)& リブブレス(Rib Breath)
- 3-2 エロンゲーション(Elongation)— 「軸」の伸展
- 3-3 リフォーマー(Reformer)— 身体を「リフォーム」する機械
- 3-4 スプリング(Spring)— 抵抗とサポートの魔術師
- 3-5 キャリッジ(Carriage)& ストラップ(Strap)
- 3-6 マット(Mat)— 自分の身体と向き合う最小の宇宙
- 3-7 まとめ:道具と言葉が「意識」を拡張する
- 第4章 ピラティスの応用用語と動作理解
- 4-1 フロー(Flow)— 動きを止めない「連続性」
- 4-2 エンゲージメント(Engagement)— 筋肉の「スイッチ・オン」
- 4-3 アーティキュレーション(Articulation)— 背骨の「分節運動」
- 4-4 レンジ・オブ・モーション(Range of Motion / ROM)— 可動域の管理
- 4-5 シーケンス(Sequence)— 構成の意図を汲み取る
- 4-6 アライメント・チェック(Alignment Check)— セルフモニタリング
- 第5章 ピラティスの応用動作と日常での活用法
- 5-1 デスクワークでの「ニュートラル・シッティング」
- 5-2 歩行時の「センター・エンゲージメント」
- 5-3 重い荷物を持つ時の「インプリント意識」
- 5-4 呼吸を日常の「リセットボタン」にする
- 第6章 レッスン・指導でよく出る用語と理解ポイント
- 6-1 「ニュートラルに戻して」— 全ての始まりと終わり
- 6-2 「肩甲骨を下げて/ポケットにしまって」— 巻き肩・首こり解消の鍵
- 6-3 「センターから動かして」— 末端の力みにサヨナラ
- 6-4 「背骨を一つずつ剥がして(アーティキュレーション)」
- 6-5 指示を即座に体現するための「内部の対話」
- 6-6 まとめ:インストラクターの言葉は「道しるべ」
- 第7章 まとめと今後の活用法
- 7-1 用語理解は「運動効果を最大化する鍵」
- 7-2 ピラティス用語を「日常のパートナー」に
- 7-3 今後のステップ:言葉を「体感」へ深化させる
- 7-4 最後に:言葉の先に待っている「自由な身体」
第1章 ピラティス用語を理解する重要性
ピラティスは「動く瞑想」とも、あるいは「身体の再教育」とも呼ばれます。筋力トレーニングと決定的に違うのは、「脳と身体の連携」を重視する点です。用語を理解することは、脳から筋肉への指令を正しく通すための「共通言語」をインストールすることに他なりません。
1-1 用語を知らないと起こる「3つのロス」
用語を曖昧なままにして動くと、せっかくのレッスンの時間がもったいない「ロス」に繋がってしまいます。
効果のロス(筋肉の間違った使用): 例えば「骨盤を立てて」と言われた際、用語の意味を取り違えて腰を反らせてしまうと、本来鍛えたい腹筋ではなく、腰の筋肉を痛めてしまう原因になります。
安全のロス(怪我のリスク): ピラティスは解剖学に基づいた運動です。「インプリント」のような安全を守るためのポジションを知らないまま足を上げ下げすると、腰椎に過度な負担がかかり、逆効果になる恐れがあります。
意識のロス(集中力の分断): 「今の言葉はどういう意味?」と考えている間に、動作は次のステップへ進んでしまいます。用語が自動的に身体の動きと結びついていれば、一動作ごとに深い集中(マインドフルネス)を保つことができます。
1-2 用語を理解するメリット:身体が変わるスピードが上がる
逆に、用語が「体感」として落ちていると、以下のような劇的な変化が起こります。
指示への即応性が高まる: インストラクターの言葉を聞いた瞬間に、深層筋が「オン」になる。このスピード感が、レッスン全体の密度を濃くします。
「自己修正力」が身につく: 自宅で一人で動いている時でも、「今、アライメントが崩れたな」と用語を通じて自分の状態を客観視できるようになります。
姿勢改善が加速する: 「ニュートラル」という言葉の意味が骨盤に染み込めば、スタジオの外で立っている時や座っている時も、無意識に正しい姿勢を選択できるようになります。
1-3 用語理解の基本スタンス:言葉を「感覚」へ翻訳する
ピラティスの用語を学ぶ際に大切なのは、英単語の丸暗記に終わらせないことです。
「骨の位置」と結びつける: 坐骨、恥骨、肩甲骨など、具体的な部位を触りながら覚えましょう。
「呼吸」とセットで覚える: ほとんどの用語は、特定の呼吸のリズムと連動しています。
「pique(ピケ)スタイル」の意識: 私たちpiqueが大切にしているのは、「感覚の可動域を広げること」です。用語をきっかけに、今まで気づかなかった微細な筋肉の動きにアンテナを立ててみてください。
1-4 まとめ:言葉はあなたの「最強の補助具」
ピラティス用語は、あなたを混乱させるためのものではなく、あなたを正解へと導くための「ガイドランナー」です。
次章からは、レッスンの最初から最後まで頻出する「基本中の基本」となる用語を、一つずつ深掘りしていきます。頭で理解し、心で感じ、身体で体現するための旅を始めましょう。

第2章 ピラティスの基本用語と意味
ピラティスのレッスンで最も頻繁に、かつ重要な局面で使われる言葉を厳選しました。これらの用語は、身体の正しい使い方を示す「精密な設計図」のパーツです。意味だけでなく、身体がどう感じるべきかという「感覚」とセットで理解していきましょう。
2-1 ニュートラル(Neutral)— 身体の「基準点」
「骨盤をニュートラルに」という指示は、ピラティスの全工程で繰り返されます。
意味: 背骨と骨盤が、解剖学的に最も自然で負担の少ない位置にある状態です。仰向けの場合、腰の下に手のひらが一枚分入る程度の隙間があり、恥骨と左右の腰骨(骨盤の出っ張り)を結ぶ三角形が床と水平になります。
pique's Eye: 私たちがニュートラルを重視するのは、ここが「最も効率的にインナーマッスルが働くスタート地点」だからです。ミリ単位のズレが効果を左右するため、鏡を見て「骨の三角形」を確認する習慣をつけましょう。
2-2 インプリント(Imprint)— 安全を守る「保護ポジション」
足を空中に持ち上げる動作などで、腰を痛めないために使われる重要な用語です。
意味: 腹筋を使い、腰椎(腰の骨)を優しくマットに沈み込ませる状態です。「ニュートラル」よりも腰の隙間を埋めるポジションですが、お尻を持ち上げたり、力任せに押し付けたりするのとは異なります。
動作での意識: 背骨でマットに「足跡(プリント)」をつけるようなイメージ。腹横筋がしっかり働き、腰への負担が腹筋へと転換されるのを感じてください。
2-3 コア(Core)& センター(Center)— 全ての動きの「発信源」
「センターから動いて」という言葉は、ピラティスの哲学そのものを表しています。
意味: 身体の中心部(腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋群)のユニットを指します。ピラティスでは、手足を動かす前に必ずこの「センター」を安定させる必要があります。
pique's Eye: 私たちはこれを「パワーハウス」とも呼びます。末端の力(アウターマッスル)に頼らず、中心からエネルギーが波及していく感覚を掴むことが、しなやかな身体への近道です。
2-4 アライメント(Alignment)— 美しさと機能の「整列」
意味: 骨、関節、筋肉が理想的な位置関係で並んでいる状態です。「アライメントを整えて」という指示は、「積み木を正しく積み直して」という意味に近いです。
動作での意識: 耳、肩、肋骨、骨盤、膝、くるぶしが一直線につながっているか。この並びが整うだけで、筋肉の無駄な緊張が消え、姿勢改善のスピードが劇的に上がります。
2-5 インナーマッスルとアウターマッスルの使い分け
インナー(深層筋): 姿勢を支える持続力のある筋肉。ピラティスでの主役です。
アウター(表層筋): 大きなパワーを出す筋肉。ピラティスでは「補助」に回ってもらいます。
意識方法: 「表面の筋肉を柔らかく保ちながら、身体の芯だけを固める」という繊細なスイッチ操作を、用語を通じて学んでいきます。
2-6 プレシジョン(Precision)— 「正確さ」という美学
ピラティスの6原則の一つです。
意味: 動作の回数や大きさよりも、「どれだけ正確に動けたか」という質を追求する概念です。
実践での意識: 10回の雑な運動より、1回の完璧なプレシジョン。自分の骨がどう動いたかを1ミリ単位でモニターする意識を持つことで、脳が身体をコントロールする能力(固有受容感覚)が磨かれます。
2-7 まとめ:用語は「身体との対話」を助けるツール
「ニュートラル」や「インプリント」という言葉を聞いたとき、あなたの脳内ではすでに骨格の再配置が始まっているはずです。
用語を理解することは、身体の中に「精度の高い定規」を持つようなもの。次章では、この基本をさらに深めるために欠かせない「呼吸」と「専用器具」に関する用語を詳しく見ていきましょう。

第3章 呼吸・体幹・器具に関する用語
ピラティスが他のエクササイズと決定的に違うのは、「呼吸」を動作のエネルギー源として使い、時には「専用マシン」の助けを借りて身体を再構築する点です。ここでは、レッスン中に必ず耳にする呼吸と器具の専門用語を整理します。
3-1 チェストブレス(Chest Breath)& リブブレス(Rib Breath)
ピラティスで行うのは、お腹を膨らませる腹式呼吸ではなく、胸郭(きょうかく)を立体的に広げる呼吸です。
意味: 鼻から吸って口から吐きながら、肋骨(リブ)を前後左右にアコーディオンのように広げる呼吸法です。
pique’s Eye: 現代人はストレスや猫背で肋骨周りがガチガチに固まっています。私たちはこの呼吸を「内側からのセルフマッサージ」と捉えています。呼吸によって肋骨の間(肋間筋)が広がることで、無理なく巻き肩が解消され、深いリラックスと体幹の安定が両立します。
3-2 エロンゲーション(Elongation)— 「軸」の伸展
意味: 「軸を伸ばす」「軸の伸展」を指します。頭のてっぺんが天井から吊り下げられているような感覚で、背骨一つひとつの間に隙間を作る意識です。
動作での意識: 息を吐きながらお腹を薄くし、同時に身長を1〜2cm高くするイメージを持ちます。この「伸びながら使う」感覚が、ピラティス特有の「しなやかで細く長い筋肉」を作ります。
3-3 リフォーマー(Reformer)— 身体を「リフォーム」する機械
スタジオで最も目を引く、ベッドのような形をしたピラティス専用マシンです。
意味: その名の通り、身体を「改善(Re-form)」するための器具です。
目的: 自重だけでは意識しにくいインナーマッスルを、スプリングの抵抗やサポートを使って正確にターゲットします。
pique’s Eye: 姿勢が崩れている人は、自分の「真っ直ぐ」が歪んでいます。リフォーマーというフレームの中で動くことで、マシンが矯正器具のように働き、「正しいアライメント(骨の並び)」を強制的に、かつ安全に身体へ覚え込ませてくれます。
3-4 スプリング(Spring)— 抵抗とサポートの魔術師
リフォーマーについている色とりどりのバネのことです。
意味: 運動の負荷を調整するパーツですが、単なる「重り」ではありません。
意識方法: 強いバネは筋力トレーニングになりますが、あえて「軽いバネ」にすることで、自分の体幹だけで姿勢を支える難易度を上げることもあります。スプリングの弾性に抗うのではなく、「スプリングと対話する」ように滑らかに動くことが、動作の精度(プレシジョン)を高めるコツです。
3-5 キャリッジ(Carriage)& ストラップ(Strap)
キャリッジ: リフォーマーの動く台座部分。この上で寝たり座ったりします。
ストラップ: 手や足にかけるループ状の紐。
動作での意識: ストラップを引っ張る時、手先の力ではなく、必ず「センター(体幹)」から動きが始まっているかを確認しましょう。末端(手足)と中心(体幹)を繋ぐアンテナのような役割を果たします。
3-6 マット(Mat)— 自分の身体と向き合う最小の宇宙
意味: 器具を使わないマットピラティスは、すべての動きを自力でコントロールする必要があるため、実は中上級者向けの一面もあります。
目的: 自分の筋力と重力だけでアライメントを維持する力を養います。
3-7 まとめ:道具と言葉が「意識」を拡張する
呼吸法をマスターし、マシンの各パーツの役割(用語)を理解することで、スタジオでの時間は単なる運動から「身体との対話」へと進化します。
「肋骨を広げて吸い、エロンゲーションを保ちながら、スプリングの抵抗を感じる」。これらの指示がパズルのように組み合わさったとき、あなたの身体は確実に変わり始めます。次章では、さらに一歩踏み込んだ「応用動作」や「レッスンの流れ」に関する用語を解説します。

第4章 ピラティスの応用用語と動作理解
基本のポジションや呼吸が理解できたら、次は「動きの質」を決定づける応用用語を押さえましょう。これらの言葉は、単発の動きを「洗練されたエクササイズ」へと昇華させるためのキーワードです。
4-1 フロー(Flow)— 動きを止めない「連続性」
ピラティスの6原則の一つであり、上級者ほど意識する概念です。
意味: 一つひとつの動作をぶつ切りにせず、流れるような一連の動き(シーケンス)として行うことです。
pique’s Eye: 姿勢改善において「フロー」が重要なのは、日常の動作は常に連続しているからです。レッスンの中で呼吸と動きを滑らかに繋げる練習をすることで、スタジオを出た後の「歩く」「座る」といった日常のフローも自然と美しく書き換えられていきます。
4-2 エンゲージメント(Engagement)— 筋肉の「スイッチ・オン」
意味: 特定の筋肉を意識的に働かせ、活性化させることです。「コアをエンゲージして」と言われたら、それは単に力を入れるのではなく、深層筋のスイッチをカチッと入れる感覚です。
動作での意識: 動き出す一瞬前に、お腹の奥が薄くなるのを感じる。これが「エンゲージ」です。この先制攻撃的な筋肉の準備が、背骨や関節を衝撃から守り、安全な姿勢改善を可能にします。
4-3 アーティキュレーション(Articulation)— 背骨の「分節運動」
猫背や反り腰の解消において、最も重要なテクニック用語です。
意味: 24個ある背骨(椎骨)を、一塊の棒ではなく、一つひとつの節として独立させて動かすことです。
動作での意識: 「背骨を真珠のネックレスのように、一粒ずつマットから剥がして、一粒ずつ置いていく」。この繊細なコントロールこそが、固まった背中をしなやかに解きほぐす鍵となります。
4-4 レンジ・オブ・モーション(Range of Motion / ROM)— 可動域の管理
意味: 関節が動く範囲のことです。
pique’s Eye: 私たちは「大きく動くこと」だけを良しとはしません。大切なのは、「アライメントを崩さずにコントロールできる範囲」で動くことです。無理に足を高く上げて腰が反ってしまう(ROMを超えた動き)よりも、小さな範囲で完璧にコントロールする方が、姿勢改善への効果は圧倒的に高いのです。
4-5 シーケンス(Sequence)— 構成の意図を汲み取る
意味: エクササイズが行われる順序のことです。
目的: ピラティスのプログラムは、ウォームアップから始まり、背骨を全方向に動かし、最後は全身を統合するように緻密に計算されています。この「流れ」に身を委ねることで、身体のバランスが整うように設計されています。
4-6 アライメント・チェック(Alignment Check)— セルフモニタリング
意味: 動作の最中に、肩、骨盤、膝などの位置がズレていないか確認することです。
意識方法: インストラクターに言われるのを待つのではなく、自分の中に「内部の目」を持つこと。鏡を見なくても「今、右の骨盤が上がったな」と感じ取れるようになることが、ピラティス用語習得のゴールの一つです。
POINT |
ここまで紹介した応用用語は、すべて「代償動作(間違った身体の使い方による補い)」を防ぐためのものです。 |

第5章 ピラティスの応用動作と日常での活用法
ピラティスの真の価値は、スタジオを出た後の「日常」で発揮されます。レッスンで学んだ「ニュートラル」や「エロンゲーション」という用語を、日々の生活動作に翻訳してみましょう。これにより、365日24時間が姿勢改善の時間へと変わります。
5-1 デスクワークでの「ニュートラル・シッティング」
仕事中、気づくと背中が丸まり、首が前に出ていませんか?
用語の活用: 椅子に座る際、「左右の坐骨(ざこつ)」を均等に座面に立て、骨盤を「ニュートラル」にセットします。
pique’s Eye: 多くの人は背もたれに寄りかかるか、逆に反り腰になりがちです。ここで「エロンゲーション」を意識し、頭頂を天井へ引き上げるだけで、デスクワーク中の肩こりや腰痛のリスクを劇的に軽減できます。
5-2 歩行時の「センター・エンゲージメント」
歩くことは、最も頻繁に行う「フロー(連続動作)」です。
用語の活用: 足を踏み出す前に、軽く「コアをエンゲージ(活性化)」させます。
意識方法: 足の筋力だけで歩くのではなく、「センター(中心)」から脚が生えているイメージで動かします。これにより、股関節の可動域が広がり、お尻や裏ももの筋肉を効率よく使える「痩せやすい歩き方」へと進化します。
5-3 重い荷物を持つ時の「インプリント意識」
日常生活での「ギックリ腰」や「腰痛」の予防には、ピラティスの安全策が役立ちます。
用語の活用: 床の荷物を持ち上げる瞬間、あるいは子供を抱き上げる時、「インプリント」の意識(腹部を薄く引き込み、背骨を守る感覚)をオンにします。
効果: 腹圧が高まることで背骨が保護され、腰の骨に過度な負担がかかるのを防ぎます。
5-4 呼吸を日常の「リセットボタン」にする
ストレスを感じた時や、集中力が切れた時こそ、ピラティスの呼吸の出番です。
用語の活用: 「リブブレス(肋骨呼吸)」を3回行います。
効果: 肋骨を横に広げる深い呼吸は、固まった胸郭を内側から解きほぐし、自律神経を整えます。これは、巻き肩をリセットし、脳に酸素を送り込む最も手軽な「ポータブル・ピラティス」です。
5-5:まとめ:用語は日常を美しくする「呪文」「ニュートラル」「コア」「エロンゲーション」。これらの言葉を日常のふとした瞬間に思い出すだけで、崩れかけた姿勢は即座に修正されます。 ピラティス用語は、あなたの身体を守り、輝かせるための「自分自身への合図」なのです。
POINT |
piqueが提案するのは、ピラティスを「週に1回のイベント」で終わらせない生き方です。 |
第6章 レッスン・指導でよく出る用語と理解ポイント
ピラティスのレッスンは、インストラクターの言葉に従って身体を動かす「聴覚と触覚のセッション」です。流れるような動き(フロー)を止めないために、現場で頻繁に使われる言葉の「本質」を整理しておきましょう。
6-1 「ニュートラルに戻して」— 全ての始まりと終わり
レッスン中、最も多く耳にする指示かもしれません。
インストラクターの意図: 動作の途中で骨盤が転がったり、腰が浮いたりしたときに出される「リセット」の合図です。
理解のポイント: 指示を聞いたら、まずは「左右の腰骨と恥骨の三角形」が床と平行か(仰向けの場合)をチェックしてください。これができていないと、次のエクササイズの効果が逃げてしまいます。
6-2 「肩甲骨を下げて/ポケットにしまって」— 巻き肩・首こり解消の鍵
インストラクターの意図: 腕を動かす際、肩が耳に近づいて(すくんで)しまう「アウターマッスルの無駄使い」を制止する言葉です。
理解のポイント: 筋肉で無理やり引き下げるのではなく、「肩甲骨の下角(一番下の尖った部分)を、お尻のポケットに滑り込ませる」ようなイメージを持ちます。これができると、首が長く、美しいデコルテラインが生まれます。
6-3 「センターから動かして」— 末端の力みにサヨナラ
インストラクターの意図: 手足の重さに負けて、体幹がグラグラしている状態を指摘しています。
理解のポイント: 指先や足先を意識する前に、まず「コア(腹横筋や骨盤底筋)」にスイッチを入れます。お腹の奥が薄く安定してから手足が動き出す。この「0.1秒の差」が、ピラティスの質を決定づけます。
6-4 「背骨を一つずつ剥がして(アーティキュレーション)」
インストラクターの意図: 「背中を一塊で持ち上げないで」という意味です。
理解のポイント: 脊柱の一つひとつの節(椎骨)に意識を向け、「シールをゆっくり剥がすように」丁寧な軌道を描きます。この時、呼吸を止めないことが最も大切です。
POINT |
piqueのセッションでは、インストラクターがあなたの身体に優しく触れて位置を直す「タクタイル(Tactile)」を重視しています。 |
6-5 指示を即座に体現するための「内部の対話」
レッスンをより深く受けるためのコツは、指示を聞いた瞬間に自分に問いかけることです。
「今、私は呼吸を止めていないか?(リブブレス)」
「軸は伸びているか?(エロンゲーション)」
「お腹の奥は起きているか?(エンゲージメント)」
このセルフチェックが習慣になると、インストラクターの指示を待つまでもなく、身体は勝手に「正しい形」を模索し始めます。
6-6 まとめ:インストラクターの言葉は「道しるべ」
レッスンで飛び交う用語は、あなたを型に嵌めるためのものではなく、あなたの身体を自由にするための「道しるべ」です。最初は戸惑うかもしれませんが、言葉と感覚が一致するたびに、あなたは自分の身体の主導権を握れるようになります。
次章はいよいよ最終章。ピラティス用語の理解が、あなたの人生をどう豊かに変えていくのかを総括します。

第7章 まとめと今後の活用法
ここまで、ピラティスの基本から応用、日常での活用に至るまで、数々の専門用語を紐解いてきました。1万字に及ぶこのガイドを読み終えた今、あなたの頭の中には、身体を美しく再構築するための「新しい地図」が描かれているはずです。
7-1 用語理解は「運動効果を最大化する鍵」
ピラティスの用語を学ぶことは、外国語を習得するプロセスに似ています。最初は一つひとつの単語を確認しながらでなければ動けなくても、繰り返すうちに、言葉を聞いた瞬間に身体が反射的に反応するようになります。
迷いが消える: 指示の意味を考える時間がなくなることで、筋肉の微細な動きに集中できるようになります。
精度が変わる: 「なんとなく動く」から「1ミリをコントロールする」へ。この精度の差が、数ヶ月後の姿勢に劇的な違いをもたらします。
安全が手に入る: インプリントやアライメントの理解は、あなたの大切な身体を怪我から守る最強のバリアとなります。
7-2 ピラティス用語を「日常のパートナー」に
スタジオで学んだ「ニュートラル」や「エロンゲーション」という言葉を、スタジオのドアを出た瞬間に忘れてしまわないでください。
私たちは、ピラティスを「ライフスタイルの一部」だと考えています。仕事中にふと「軸が縮んでいるな(エロンゲーションが必要だ)」と感じたり、歩いている時に「センターから足が出ているかな」と意識したりすること。その小さな瞬間の積み重ねが、猫背や反り腰、慢性的な肩こりからあなたを永久に解放してくれます。
7-3 今後のステップ:言葉を「体感」へ深化させる
本ガイドをこれからの練習にどう活かすか、3つのステップを提案します。
「今月のキーワード」を決める: 全ての用語を一気に完璧にしようとせず、今月は「ニュートラル」、来月は「アーティキュレーション」というように、一つずつ体感を深めてみてください。
インストラクターに質問する: もしレッスン中に「今の用語、身体のどこで感じるのが正解ですか?」と疑問に思ったら、遠慮なく質問してください。その対話こそが、あなたの身体の「地図」をより鮮明にします。
変化を楽しむ: 用語が理解できるほどに、身体のコントロールが楽しくなります。「今日は脊柱が一つずつ剥がれる感覚がわかった!」という小さな成功体験を大切にしてください。
7-4 最後に:言葉の先に待っている「自由な身体」
ピラティスの専門用語は、あなたを制限するためのルールではありません。それは、重力や日々のストレスに負けない、「しなやかで自由な身体」を手に入れるためのパスワードです。
piqueが提供する空間や、この「ピラティスファン」の情報が、あなたの身体の旅を支える良きガイドとなれば幸いです。
正しい言葉で、正しく身体と対話する。その先に待っているのは、凛とした立ち姿と、どこまでも軽やかな毎日です。さあ、学んだ言葉を胸に、次のレッスンへ一歩踏み出しましょう。
この記事の監修者

韓梨瑛
株式会社pique 副社長
piqué pilatesインストラクター
【経歴】
幼少期からクラシックバレエを習い、昭和音楽大学バレエ科を専攻。卒業後、大手ホットヨガスタジオにて5年間インストラクターとして勤務。
その後、ピラティスインストラクターとして活動を開始し、現在インストラクター歴5年目。
現在はピラティススタジオを経営しながら、インストラクターとしても活動中。
【資格】
PHIマットI/II、リフォーマー、タワー
RYT200