妊娠中でもピラティスはできるのか――結論から言うと、医師の許可と適切な方法があれば可能です。むしろ、身体機能を整えるという観点では有効な運動の一つとされています。
妊娠中は体重増加や重心の変化、ホルモンの影響によって、腰痛や肩こり、むくみなどの不調が出やすくなります。こうした不調の多くは「身体のバランスの崩れ」が原因です。ピラティスはこのバランスを整えることに特化しているため、妊娠期との相性が良いと考えられています。
ただし、安全に行うためにはいくつかの重要な前提があります。
医師の許可を得る
無理をしない
妊娠期に適した内容で行う
これらを守らずに行うと、逆に身体へ負担をかけてしまう可能性もあります。

- 第1章 マタニティピラティスとは何か
- 1-1 妊娠中の身体変化と運動の必要性
- 1-2 マタニティピラティスの特徴
- 1-3 ヨガとの違い
- 1-4 マタニティ期に運動するメリット
- 第2章妊娠中にピラティスを行うメリット
- 2-1 腰痛・肩こりなどの不調軽減
- 2-2 姿勢改善による身体負担の軽減
- 2-3 むくみ・血流改善への影響
- 第3章:妊娠中にピラティスはいつからいつまでできる?
- 3-1 妊娠初期(〜15週頃)の考え方
- 3-2 安定期(16週〜27週頃)は最も適した時期
- 3-3 妊娠後期(28週以降)の実施ポイント
- 3-4 中止すべきサインと判断基準
- 3-5 期間よりも重要な「個別性」という考え方
- 第4章 妊娠中にピラティスを安全に行うためのポイント
- 4-1 医師の許可とリスク確認の重要性
- 4-2 専門指導のもとで行うべき理由
- 4-3 呼吸を止めないことが最重要
- 4-4 姿勢とポジションの工夫
- 第5章 マタニティピラティスがおすすめな人
- 5-1 腰痛や肩こりなどの不調を感じている人
- 5-2 運動不足を感じている人
- 5-3 体力低下を防ぎたい人
- 5-4 出産に向けて身体を整えたい人
- 5-5 産後の回復を見据えている人
- 第6章 妊娠中に避けるべきピラティス動作と注意点
- 6-1 強い腹筋運動・腹圧の高い動作
- 6-2 長時間の仰向け姿勢
- 6-3 バランスが不安定な動作
- 6-4 過度なストレッチ
- 6-5 反動・スピードを伴う動き
- 6-6 息を止める・力みすぎる動作
- 6-7 痛みや違和感を無視すること
- 第7章 産後へのメリットと身体回復への影響
- 7-1 体幹機能の維持が回復速度に影響する
- 7-2 骨盤底筋への意識が産後トラブルに影響
- 7-3 姿勢回復のしやすさ
- 7-4 産後の腰痛・肩こり予防につながる
- 第8章 まとめ|妊娠中のピラティスは「正しくやれば有効」
- 8-1 妊娠中でもピラティスは可能か
- 8-2 実施できる期間の目安
- 8-3 結論
第1章 マタニティピラティスとは何か
1-1 妊娠中の身体変化と運動の必要性
妊娠中の身体は、短期間で大きく変化します。体重増加だけでなく、骨格や筋肉のバランス、ホルモン環境、血流の状態まで幅広く変わるため、これまでと同じ身体の使い方では対応しきれなくなります。この変化に適応できないことが、不調の主な原因となります。
特に重要なのが重心の変化です。お腹が大きくなることで身体は前方へ引っ張られ、それを支えるために腰を反らせる姿勢になりやすくなります。この状態が続くと腰部への負担が増え、腰痛や背中の張りを引き起こしやすくなります。また、胸郭の位置が変わることで肩や首にも負担がかかり、肩こりや首こりにつながるケースも少なくありません。
そのため、妊娠中は完全に運動を避けるのではなく、身体機能を整えるための適切な運動を取り入れることが重要とされています。特に負荷の低い運動は、血流の改善や筋肉の柔軟性維持、姿勢の安定に役立つ可能性があります。
1-2 マタニティピラティスの特徴
マタニティピラティスは、通常のピラティスをそのまま行うのではなく、妊娠中の身体状態に合わせて内容を調整したプログラムです。最も大きな特徴は、安全性を確保しながら身体機能を整える点にあります。
一般的なトレーニングでは筋力向上や負荷を高めることに重点が置かれますが、マタニティピラティスではそれとは異なり、無理のない範囲で身体の使い方を整えることが目的となります。呼吸と動作を連動させながらゆっくりと動くことで、関節や靭帯に過度な負担をかけずに、深層の筋肉へアプローチできる点が特徴です。
もう一つの特徴として、個別調整が可能である点が挙げられます。妊娠週数や体調は個人差が大きいため、一律の運動では対応できません。マタニティピラティスでは、その日の体調や身体の状態に応じて動きを変更できるため、安全性を維持しながら継続しやすい環境が整っています。
1-3 ヨガとの違い
妊娠中の運動としてよく比較されるのがヨガですが、ピラティスとは目的とアプローチが異なります。どちらも呼吸を重視する点では共通していますが、身体への働きかけ方に違いがあります。
ヨガはリラクゼーションや精神的安定、柔軟性の向上を重視する傾向があり、心身のバランスを整えることに重点が置かれています。一方でピラティスは、筋肉の使い方や姿勢制御といった「身体機能の改善」にフォーカスしています。特に体幹の安定性や骨盤のコントロールに対するアプローチが強い点が特徴です。
一方で、精神的な不安やストレスの軽減を主目的とする場合にはヨガが適していることもあります。実際にはどちらか一方を選ぶというよりも、自分の目的や体調に応じて使い分けることが重要です。
違いを整理すると次のようになります。
ヨガ:リラックス・柔軟性・精神面の安定
ピラティス:姿勢改善・体幹機能・身体の安定性
このように、ピラティスは「整える」、ヨガは「緩める」という方向性の違いがあり、妊娠中の身体トラブルの改善という観点では、ピラティスが適しているケースも多いといえます。
1-4 マタニティ期に運動するメリット
妊娠中に運動を取り入れることに不安を感じる方は多いですが、適切な方法で行えば身体にとってプラスに働くことが多いとされています。重要なのは「負荷の強さ」ではなく、「身体機能を維持・調整できるかどうか」です。
特にピラティスのような低負荷の運動は、身体に過度なストレスをかけずに動かせるため、妊娠中でも取り入れやすい特徴があります。筋肉を大きく鍛えるというよりも、必要な筋肉を適切に使うことで、身体の負担を減らす方向に働きます。
また、運動は精神面にも影響を与えます。妊娠中はホルモンの影響により気分が不安定になりやすい時期ですが、身体を動かすことで気分転換になり、ストレスの軽減につながることがあります。呼吸を伴う運動は自律神経にも作用しやすく、リラックスしやすい状態を作ることができます。
piqué pilatesでは、妊娠期の身体変化に合わせた完全個別調整を行い、その日の体調や週数に応じて負担のない範囲でプログラムを設計しています。

第2章妊娠中にピラティスを行うメリット
妊娠中は身体構造の変化に加えて、ホルモンバランスや血流、筋肉の働き方など、複数の要素が同時に変化します。その結果、不調の原因は単純な筋力不足ではなく「身体の使い方のアンバランス」によって引き起こされるケースが多くなります。
マタニティピラティスは、このアンバランスを整えることを目的とした運動であり、単なる体力維持ではなく「機能改善」にアプローチできる点が特徴です。本章では、その具体的なメリットを身体面・精神面の両方から整理していきます。
2-1 腰痛・肩こりなどの不調軽減
妊娠中に最も多くの方が感じる不調の一つが腰痛です。お腹の増大によって重心が前方へ移動すると、それを支えるために腰は反る方向へ適応します。この状態が続くことで、腰椎周囲の筋肉は常に緊張した状態となり、疲労が蓄積しやすくなります。
具体的には以下のような連鎖が起こりやすくなります。
反り腰 → 腰の筋肉の緊張増加
巻き肩 → 肩・首の負担増加
背中の丸まり → 呼吸の浅さ・疲労感
ピラティスでは、こうした局所的な負担ではなく「全身で支える状態」を作ることを目的とします。体幹の深層筋を活性化することで骨盤と背骨の安定性が高まり、結果として特定の部位に集中していた負担が分散されます。
重要なのは筋肉を強くすることではなく、適切なタイミングで適切な筋肉が働く状態を作ることです。この変化により、慢性的な不調の軽減が期待できます。
2-2 姿勢改善による身体負担の軽減
妊娠中は日常生活の中で姿勢が徐々に崩れていきますが、多くの場合それに自覚がありません。身体はバランスを取るために無意識に代償動作を行うため、一見問題がないように見えても、実際には負担が偏っている状態になっています。
代表的な姿勢変化としては以下が挙げられます。
骨盤前傾による反り腰
胸郭の位置変化による猫背
頭部前方移動による首への負担
これらはすべて、身体の中心軸が崩れているサインです。
ピラティスでは、骨盤・背骨・肋骨の位置関係を整えながら動くことで、この中心軸を再構築していきます。ここで重要になるのが「姿勢認識能力」です。自分の身体の位置を正しく感じ取れるようになることで、日常生活の中でも無意識に姿勢を修正できるようになります。
姿勢が整うことで得られる変化は大きく、
動作がスムーズになる
無駄な力みが減る
疲労が蓄積しにくくなる
といった、生活全体の快適さに直結します。妊娠後期に向かうほどこの差は大きくなります。
2-3 むくみ・血流改善への影響
妊娠中は血液量が増加する一方で、子宮の拡大によって血管が圧迫されるため、特に下半身の循環が滞りやすくなります。さらに活動量の低下が重なることで、むくみやだるさを感じやすい状態になります。
この状態を放置すると、
足の重だるさ
冷え
疲労感の増加
といった不快症状が慢性化する可能性があります。
ピラティスではゆっくりとした反復動作を行うため、筋肉のポンプ作用が働きやすくなります。特にふくらはぎや股関節周囲の筋肉を適度に動かすことで、血液やリンパの流れが促進されます。
第3章:妊娠中にピラティスはいつからいつまでできる?
妊娠中にピラティスを取り入れる際、多くの方が気になるのが「いつから始めてよいのか」「どのタイミングまで継続できるのか」という点です。結論から言えば、明確に一律の期間が決まっているわけではなく、最も重要なのは妊娠経過と体調、そして医師の判断です。ただし一般的な目安としては、安定期以降に開始し、問題がなければ出産直前まで継続することが可能とされています。
ここでは妊娠の各時期ごとに、安全性と実施のポイントを整理していきます。
3-1 妊娠初期(〜15週頃)の考え方
妊娠初期は外見上の変化が少ない一方で、身体の内部では非常に大きな変化が起きている時期です。ホルモンバランスの急激な変化により、自律神経が不安定になりやすく、つわりや強い倦怠感、眠気などが出やすくなります。また、この時期は妊娠経過がまだ安定していない段階であり、一般的に流産リスクが比較的高いとされる期間でもあります。そのため、新たに運動習慣を始めるには慎重な判断が必要です。
すでにピラティスなどの運動習慣がある場合でも、
・強度を大きく下げる
・体調が悪い日は完全に休む
・無理に継続しない
といった対応が基本となります。
3-2 安定期(16週〜27週頃)は最も適した時期
安定期に入ると、つわりが落ち着き、体調が安定してくる方が多くなります。このタイミングが、マタニティピラティスを始めるうえで最も適した時期とされています。
胎盤機能が安定し、身体も妊娠状態に適応してくるため、運動に対する耐性が高まりやすくなります。また、適度に身体を動かすことで、妊娠中に起こりやすい不調の予防・軽減にもつながります。
ただし、この時期であっても注意点は存在します。
・腹圧が強くかかる動作は避ける
・息を止めるような運動は行わない
・反動やスピードを伴う動きは控える
といった基本的なルールは必ず守る必要があります。
安定期は「動けるから強度を上げる」のではなく、「安全に身体機能を整える」ことが目的です。専門指導のもとで、自分の身体に合った内容に調整しながら進めることが重要になります。
3-3 妊娠後期(28週以降)の実施ポイント
妊娠後期に入ると、お腹が大きくなり、身体への負担が一気に増加します。重心の変化も顕著になり、バランス能力の低下や動きにくさを感じる場面が増えてきます。
この時期のピラティスは「継続できるかどうか」よりも、「どのように安全に調整するか」が重要になります。
特に意識すべきポイントは以下の通りです。
・仰向け姿勢を長時間とらない
・バランスを崩しやすい動作は避ける
・こまめに休憩を取る
・呼吸が苦しくなる前に止める
また、後期になると「できる動き」が減ることは自然なことです。無理に妊娠前と同じように動こうとする必要はありません。
むしろこの時期は、
・身体の緊張を緩める
・呼吸を整える
・血流を促す
といったコンディショニング要素を中心にすることが重要です。
3-4 中止すべきサインと判断基準
妊娠中の運動において最も重要なのは「異常の早期察知」です。通常時であれば問題ない軽い不調でも、妊娠中は注意が必要なサインである場合があります。
以下のような症状が出た場合は、即座に運動を中止し、医療機関へ相談することが推奨されます。
・性器出血
・強い腹痛や張りの増加
・めまい、ふらつき
・動悸や息切れ
・気分不良や吐き気の悪化
これらは一時的な体調不良の可能性もありますが、重大なトラブルの前兆であるケースも否定できません。
重要なのは、「少し様子を見る」ではなく、「すぐに止める」という判断です。
3-5 期間よりも重要な「個別性」という考え方
ここまで時期ごとの目安を説明しましたが、最も重要なのは「いつからいつまで」という形式的な基準ではありません。
妊娠経過は個人差が非常に大きく、
・体調の安定度
・既往歴
・運動経験
・医師の判断
によって適切な運動量やタイミングは大きく変わります。
そのため、
「安定期だから大丈夫」
「後期でもできる人がいるから自分もできる」
といった一律の判断は危険です。
あくまで自分の身体の状態を最優先にし、必要に応じて医師や専門指導者と相談しながら進めることが、安全にピラティスを行うための基本となります。

第4章 妊娠中にピラティスを安全に行うためのポイント
妊娠中のピラティスは、正しく行えば身体機能の維持・改善に有効な手段となりますが、安全性の確保が最優先であることは言うまでもありません。通常時とは異なり、関節の安定性低下や血流変化、ホルモンの影響などが重なるため、「できる動き」ではなく「やってよい動きかどうか」という視点が重要になります。
ここでは、安全にマタニティピラティスを行うために押さえるべき実践ポイントを解説します。
4-1 医師の許可とリスク確認の重要性
最初に必ず行うべきなのが、医師への確認です。妊娠中の運動は一般的に推奨されるケースが多いものの、すべての妊婦に当てはまるわけではありません。
例えば、切迫早産のリスクがある場合や、妊娠高血圧症候群、前置胎盤などの診断がある場合は、運動制限が必要になることがあります。
そのため、
・運動を始めてよい状態か
・どの程度の強度まで許容されるか
・避けるべき動作はあるか
といった点を事前に確認しておく必要があります。
「軽い運動だから大丈夫」という自己判断は避け、医療的な安全性を前提にスタートすることが重要です。
4-2 専門指導のもとで行うべき理由
マタニティピラティスは通常のピラティスとは異なり、妊娠期特有の身体状態を前提とした調整が必要です。そのため、可能であればマタニティ対応のインストラクターの指導を受けることが望ましいとされています。
理由は大きく2つあります。
1つは「動作の適切な修正」です。
同じエクササイズでも、妊娠中は角度や可動域、負荷のかけ方を細かく調整する必要があります。
もう1つは「異常の早期察知」です。
自分では気づきにくい身体の変化や負担を、第三者の視点でチェックしてもらうことができます。
自己流でもできないわけではありませんが、安全性と効果の両面を考えると、専門指導の価値は非常に高いといえます。
4-3 呼吸を止めないことが最重要
ピラティスにおいて呼吸は基本ですが、妊娠中は特に重要性が高まります。呼吸を止めることで腹圧が急激に上昇し、身体への負担が大きくなる可能性があるためです。
動作中は常に呼吸を続けることを意識し、
・力むときに息を吐く
・動きながら自然に呼吸する
といった基本を徹底する必要があります。
また、呼吸が浅くなってきた、息苦しさを感じるといった場合は、それ自体が負荷過多のサインです。その時点で強度を下げる、または中止する判断が必要になります。
4-4 姿勢とポジションの工夫
妊娠中は姿勢そのものが大きく変化するため、エクササイズ時のポジション設定が重要になります。
特に注意が必要なのは仰向け姿勢です。妊娠中期以降は、子宮の重みで血管が圧迫される可能性があり、血流低下や気分不良につながることがあります。
そのため、
・横向き(側臥位)
・四つ這い
・座位
などの姿勢を中心に構成することが安全性を高めるポイントになります。
また、クッションやボールなどの補助具を使うことで、身体への負担をさらに軽減することができます。
また、piqué pilatesではマタニティ対応の指導者が一人ひとりの状態を確認しながら進めるため、自己流では難しい安全管理と効果的なアプローチの両立が可能です。

第5章 マタニティピラティスがおすすめな人
妊娠中の運動は個人差が大きく、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。その中でもマタニティピラティスは「身体機能を整える」という特性から、特定の悩みや目的を持つ方にとって特に有効とされています。
ここでは、どのような人に適しているのかを、背景となる身体状態とともに解説します。
5-1 腰痛や肩こりなどの不調を感じている人
妊娠中は姿勢変化により、腰部や肩周囲に負担が集中しやすくなります。特にお腹の増大によって重心が前方へ移動すると、身体はバランスを取るために無意識に反り腰姿勢を取るようになります。この状態が続くことで、腰椎周囲の筋肉が過剰に緊張し、慢性的な腰痛につながるケースが多く見られます。
さらに、胸郭の位置変化や猫背傾向が加わることで、背部や肩周囲の筋肉にも負担がかかり、肩こりや背中の張りを感じることも増えてきます。
マタニティピラティスでは、体幹の深層筋を活性化し、骨盤と背骨の安定性を高めることを重視します。単純に筋肉を鍛えるのではなく、「正しく支える機能」を回復させることで、局所的な負担を分散させるアプローチです。
このような機能改善が進むことで、結果的に痛みや不快感の軽減につながる可能性があります。
5-2 運動不足を感じている人
妊娠中は活動量が低下しやすく、結果として運動不足に陥る方が少なくありません。体調の変化や外出頻度の減少により、意識しなければ身体を動かす機会は大きく減ります。
運動不足が続くと、筋力低下や血流低下だけでなく、姿勢の崩れや疲れやすさといった問題にもつながります。しかし妊娠中に激しい運動を行うことは難しいため、「何をやればいいのか分からない」という状態になりやすいのも特徴です。
マタニティピラティスは低負荷でありながら、身体全体をバランスよく動かすことができるため、運動習慣がない方でも比較的取り入れやすい方法です。
また、単にカロリーを消費する運動ではなく、身体の使い方そのものを改善するため、少ない負荷でも効率よく身体に刺激を与えることができます。
5-3 体力低下を防ぎたい人
出産は身体にとって大きな負荷を伴うイベントであり、ある程度の体力が求められます。妊娠期間中に活動量が極端に減少すると、体力は想像以上に低下します。
特に体幹を支える筋肉や姿勢を維持する筋群は、使わない期間が続くと機能低下が起こりやすくなります。この状態で出産を迎えると、分娩時の負担が増えるだけでなく、産後の回復にも影響が出る可能性があります。
マタニティピラティスは高強度のトレーニングではありませんが、筋持久力や身体コントロール能力を維持するには十分な刺激を与えることができます。
結果として、
・出産時の体力的負担の軽減
・産後回復のスムーズさ
・育児への適応
といった点に間接的な影響を与える可能性があります。
5-4 出産に向けて身体を整えたい人
妊娠中は骨盤や筋肉のバランスが大きく変化します。特に骨盤底筋や腹部の深層筋、呼吸に関わる筋肉は、出産時にも重要な役割を担います。
マタニティピラティスでは、呼吸と体幹の連動を意識しながら動くことで、身体内部の感覚を高めていきます。この「自分の身体をコントロールする感覚」は、分娩時の呼吸や力の入れ方にも関係してきます。
単に筋肉を鍛えるのではなく、
身体の使い方を理解する
呼吸をコントロールする
リラックスする感覚を身につける
といった点が、出産に向けた準備として意味を持ちます。
5-5 産後の回復を見据えている人
妊娠中の身体状態は、産後の回復スピードに影響を与える可能性があります。筋力や姿勢機能が極端に低下した状態で出産を迎えると、身体を元に戻すまでに時間がかかることがあります。
一方で、妊娠中から適度に身体を動かし、機能を維持していた場合は、回復過程が比較的スムーズに進む傾向があります。
マタニティピラティスは、体幹や骨盤周囲の機能を維持することに適しているため、
・姿勢回復
・骨盤安定
・筋機能の再獲得
といった面でプラスに働く可能性があります。
特にpiqué pilatesでは、「その場しのぎのケア」ではなく、妊娠中から産後までを見据えた身体づくりを重視しており、出産後の回復や育児負担まで考えたサポートを行っています。
第6章 妊娠中に避けるべきピラティス動作と注意点
妊娠中のピラティスは適切に行えば安全性の高い運動ですが、「すべての動作が安全」というわけではありません。妊娠に伴い身体構造や生理機能が大きく変化しているため、通常時には問題ない動きでも、妊娠中には負担やリスクとなるケースがあります。
重要なのは、「何をやるか」よりも「何を避けるか」を理解しておくことです。ここでは代表的な注意点と、その理由を具体的に解説します。
6-1 強い腹筋運動・腹圧の高い動作
妊娠中に最も注意が必要なのが、腹部に強い負荷がかかる動きです。特に腹直筋を強く収縮させるようなエクササイズや、息を止めて力む動作は避ける必要があります。
妊娠中は子宮の拡大により腹壁が引き伸ばされており、通常よりも構造的に不安定な状態になっています。この状態で過度な腹圧をかけると、
・腹直筋離開のリスク増加
・骨盤底筋への過負荷
・体幹の不安定性悪化
といった問題につながる可能性があります。
ピラティス本来の目的は「支える機能の向上」であり、強く縮めることではありません。妊娠中は特に「力を入れる」よりも「コントロールする」ことを優先する必要があります。
6-2 長時間の仰向け姿勢
妊娠中期以降は、仰向けの姿勢に注意が必要です。大きくなった子宮が下大静脈を圧迫することで、血流が低下し、めまいや気分不良を引き起こす可能性があります。
短時間であれば問題ない場合もありますが、長時間の継続は避けるべきです。特にエクササイズ中は呼吸や循環にも影響が出やすいため、注意が必要です。
そのため実践では、
・横向き(側臥位)
・四つ這い
・座位
といったポジションを中心に構成することが基本となります。
仰向けが絶対に禁止というわけではありませんが、「違和感が出る前に避ける」という判断が安全性を高めます。
6-3 バランスが不安定な動作
妊娠が進むにつれて、重心は前方へ移動し、バランス能力が低下します。また関節が緩みやすくなることで、身体の安定性も下がります。
この状態で不安定な姿勢を取ると、転倒リスクが高まります。転倒は妊娠中において最も避けるべきリスクの一つです。
特に注意が必要なのは、
・片脚立ちでの動作
・不安定な器具を使うエクササイズ
・急な方向転換を伴う動き
などです。
安全に行うためには、「安定した姿勢で行えるか」を基準に動きを選ぶ必要があります。見た目に簡単そうな動きでも、バランスが不安定になる場合は避ける判断が適切です。
6-4 過度なストレッチ
妊娠中はリラキシンというホルモンの影響で、関節や靭帯が緩みやすくなります。そのため柔軟性が高まったように感じることがありますが、これは「安全に伸ばせる範囲が広がった」という意味ではありません。
むしろこの状態で過度なストレッチを行うと、
・関節の不安定性増加
・筋肉の過伸張
・痛みや違和感の発生
といったリスクがあります。
ストレッチは「可動域を広げるため」ではなく、「筋緊張を緩めるため」に行うのが基本です。気持ちよさを感じる範囲で止めることが、安全性を保つポイントになります。
6-5 反動・スピードを伴う動き
ピラティスは本来、コントロールされたゆっくりした動きが特徴ですが、一部のエクササイズでは反動やスピードを使う動きも存在します。
妊娠中においては、こうした動きは身体への負担が大きくなりやすく、コントロールも難しくなるため避けるべきです。
反動を使うことで、
・関節に急激な負荷がかかる
・筋肉のコントロールが低下する
・バランスを崩しやすくなる
といったリスクが高まります。
すべての動きは「ゆっくり・正確に・コントロールして行う」ことが前提です。
6-6 息を止める・力みすぎる動作
無意識のうちに起こりやすいのが、動作中に息を止めてしまうことです。特に力を入れる場面では呼吸が止まりやすくなります。
しかし妊娠中においては、呼吸停止は腹圧の急上昇を引き起こし、身体への負担が大きくなります。
また、過度に力むことで、
・骨盤底筋への過負荷
・血圧上昇
・疲労の増加
といった影響も考えられます。
ピラティスの基本である「呼吸と動きの連動」を徹底し、常に自然な呼吸を保つことが重要です。
6-7 痛みや違和感を無視すること
最も重要な注意点は、「身体のサインを無視しないこと」です。
妊娠中は普段と異なる感覚が出やすいため、「これくらい大丈夫」と判断してしまうことがあります。しかし違和感は身体からの重要な警告である場合があります。
特に、
・お腹の張り
・鋭い痛み
・気分不良
などは、その時点で中止すべきサインです。運動の効果よりも安全性が常に優先されるため、「やめる判断」を迷わないことが重要です。

第7章 産後へのメリットと身体回復への影響
妊娠中に行うマタニティピラティスは、その期間の体調管理や不調軽減だけでなく、「産後の身体回復」にも関係してきます。出産は身体にとって非常に大きな変化を伴う出来事であり、筋肉・関節・骨盤・ホルモン環境が一気に変わります。そのため産後は多くの方が、身体の不安定さや疲労、痛みを感じやすい状態になります。
この回復過程において、妊娠中の身体状態が影響する可能性があるため、マタニティ期からの身体づくりは単なる一時的な対策ではなく、長期的な視点での価値を持ちます。
7-1 体幹機能の維持が回復速度に影響する
妊娠中はお腹の拡大により腹筋群が引き伸ばされ、体幹の安定性が低下しやすくなります。特に腹横筋や骨盤底筋といった深層筋は影響を受けやすく、機能低下が起こると姿勢の崩れや腰痛の原因になります。
マタニティピラティスでは、これらの筋肉を強く鍛えるのではなく、「適切に使う感覚」を維持することを重視します。この神経的なコントロールが保たれているかどうかが、産後の回復に大きく関係します。
身体は使っていた機能ほど回復しやすく、逆に使われていなかった機能は再獲得に時間がかかります。妊娠中から体幹意識を持っていた場合、産後にその感覚を取り戻すまでのプロセスがスムーズになります。
7-2 骨盤底筋への意識が産後トラブルに影響
骨盤底筋は、妊娠中から出産にかけて最も負荷がかかる筋肉の一つです。子宮の重量増加や分娩時の伸張によって、機能低下が起こりやすくなります。
この影響として産後に見られる代表的なトラブルが、
・尿漏れ
・骨盤の不安定感
・体幹の弱さ
などです。
マタニティピラティスでは、骨盤底筋を単独で鍛えるのではなく、呼吸や体幹筋と連動させながら使うことを学びます。この「連動した使い方」の感覚があるかどうかが、産後の回復において重要になります。
筋肉は存在していても、適切に使えなければ機能しません。妊娠中から感覚を保っておくことで、産後の再活性化がしやすくなります。
7-3 姿勢回復のしやすさ
妊娠中は重心変化により、反り腰や猫背といった姿勢の崩れが起こりやすくなります。この状態は出産後すぐに自然に戻るわけではなく、そのまま定着してしまうケースも少なくありません。
姿勢が崩れたまま生活を続けると、腰痛や肩こりの原因となり、育児による負担をさらに大きくしてしまいます。
妊娠中から姿勢意識を持ち、身体のポジションを整える習慣がある場合、産後にニュートラルな姿勢へ戻す過程がスムーズになります。
特に産後は、
・抱っこ
・授乳
・前かがみ姿勢
といった動作が増えるため、姿勢機能の差がそのまま身体負担の差につながります。
7-4 産後の腰痛・肩こり予防につながる
産後は想像以上に身体への負担が大きい時期です。睡眠不足に加え、同じ姿勢が長時間続くことや、赤ちゃんの抱っこによる負荷が積み重なります。
このとき重要になるのが「身体の使い方」です。
マタニティピラティスで身につくのは筋力だけではなく、
・重心のコントロール
・力の分散
・無駄な緊張を減らす動き
といった機能的な動作です。
これらが身についていると、同じ育児動作でも身体への負担を分散しやすくなり、結果として腰痛や肩こりの予防につながる可能性があります。
第8章 まとめ|妊娠中のピラティスは「正しくやれば有効」
8-1 妊娠中でもピラティスは可能か
結論として、妊娠中でもピラティスは実施可能です。
ただし前提として、医師の許可と体調管理が必須条件になります。
ピラティスは低負荷で身体機能の改善を目的とした運動であるため、妊娠期の身体変化にも適応しやすい特徴があります。適切に行えば、無理なく身体を整えることができます。
8-2 実施できる期間の目安
妊娠中のピラティスは、一般的に以下のように考えられます。
・開始:安定期(16週以降)が目安
・継続:体調が良ければ出産直前まで可能
ただし最優先は週数ではなく体調です。
8-3 結論
・妊娠中でもピラティスは可能
・不調改善・体力維持に有効
・安全管理が最重要
・自己判断は避けるべき
妊娠期は身体が大きく変化する重要な期間です。無理のない範囲で適切に身体を整えることが、出産や産後の状態にもつながります。piqué pilatesでは、こうした考え方をもとに、安全性と機能改善の両立を重視したマタニティピラティスを提供しています。
この記事の監修者

川上莉奈
piqué pilatesインストラクター
【保有資格】
・PHI Pilates Instructor 取得
【プロフィール/経歴】
piqué pilatesの在籍インストラクター。
幼少期からクラシックバレエを習い、大学を卒業後はヨガ・ピラティスのインストラクターとしてレッスン指導をメインに、店舗運営に携わる。
その後、人材業界にて企業の求人出稿や母集団形成をメインに、幅広い業種・職種の採用支援を経験。
現在はpiqué pilatesにて採用・研修マネージャーとして、社内研修の企画・実施および採用面接を担当している。